麻酔科
麻酔を受けられる皆様へ
これから麻酔を受ける患者様やそのご家族に、麻酔について少しでも理解していただくためのページです。
最終的には、麻酔科医や主治医から麻酔の説明がありますが、事前に知っておいていただきたいこともありますので、できるだけよく読んでいただきたいと思います。
わからないことがあれば、外来ででも入院後でも構いませんので、気軽におたずね下さい。
1.麻酔の安全性
麻酔は、手術中の痛みをとるだけではなく、手術をより安全におこなうためにはなくてはならない技術です。 手術中は患者様の状態の変化に対応するために、麻酔科医が処置をしています。現代の麻酔は、モニター機器、麻酔器、麻酔薬等の進歩により、非常に安全なものとなりました。しかし、全ての患者様に関して、全く安全というわけではありません。 万全の体制で臨んでも 、全身麻酔の場合、約25万例に1例程度は危険な状態になることがあります。 当院では患者様に安心して麻酔を受けていただくため、術前のリスク査定や麻酔計画を重視し合併症の予防に努めるとともに、万が一合併症が発生した場合でも、迅速に最善の対応をとれるように努力をしています。
2.麻酔の種類
麻酔は、患者様の意識をとって眠らせる全身麻酔と、意識を保ったままの局所麻酔に大きく分けられます。
麻酔方法は、麻酔科医が患者様の手術内容、手術時間、手術部位、術前の検査結果、年齢などを考え、主治医とも相談のうえ決定しますが、ご希望があれば相談して下さい。
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A. 全身麻酔
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全身麻酔は、意識をなくして眠らせるような麻酔方法です。患者さんは呼吸が弱くなるため、 人工的に呼吸を補助することが必要になります。
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B. 局所麻酔(脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔・神経ブロック・(狭義の)局所麻酔)
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局所麻酔では、意識や呼吸は保たれています。
脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔では、背中の中央部分から局所麻酔薬を注入し、手術部位の痛みを感じなくします。 神経ブロックは、手術部位を支配する神経周囲に局所麻酔薬を注入して、痛みを軽減させます。
狭い意味で「局所麻酔」と言う場合には、手術創部周辺や太い針で穿刺をする部位などに局所麻酔薬を浸潤させるような麻酔法を指します。他の麻酔法の補助として、用いることがあります。
局所麻酔は全身麻酔とは違い、体の一部分にのみ麻酔をするため、効果が不十分なことがあります。その場合、更に麻酔を追加することもあれば、全身麻酔に変更する場合もありますので、あらかじめご了承下さい。
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C. 全身麻酔と局所麻酔の組み合わせ
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全身麻酔に局所麻酔を併用することがあります。全身麻酔には鎮静(意識をとる)、鎮痛(痛みをとる)、筋弛緩(筋肉をゆるめる)という3要素が必要です。通常これらは、それぞれに対応する薬剤を全身投与することにより、達成しています。しかしこの中の「鎮痛」という要素を、局所麻酔で一部代用することができるのです。その場合、全身に投与する薬剤の量を減らすことができ、また局所麻酔法は術後の鎮痛にも寄与できることが多く、麻酔全体の質を高めることにつながります。
3.麻酔の準備
A. 手術前の絶食等について
麻酔の際には、もどしやすい状態になることがあります。もどした食べ物は気管や肺に入ることがあり、窒息や誤嚥性肺炎を引き起こします そのため、麻酔前は胃の中に食べた物が残っていない状態にする必要があります。命に関わる事態となることもありますので、手術前の食事、水分制限は必ず守ってください。
常用薬を手術前に服用するかどうかにについては、主治医や担当看護師の指示に従ってください。中には入院前から中止しなくてはならない薬もありますので、十分注意してください。
また、着脱可能な義歯、指輪等については、原則として外していただくことになっています。主治医・麻酔科医や担当看護師の指示に従ってください。
B.手術前後の禁煙について
近年、周術期(手術前後)の喫煙により、麻酔・手術関連リスクが著明に増大することが明らかになっています。もし手術直前まで喫煙を続けていると、麻酔中に息ができなくなり最悪の場合死亡する可能性や、手術後に傷の治りが悪くなり再手術が必要になる可能性が増大します。そのため周術期の禁煙は必須事項とされ、医療による手術前後の禁煙介入が強く求められる時代となりました。これから手術を受ける患者様には、術前にできるかぎり禁煙(加熱式タバコも含む)していただくようお願いいたします。当院には禁煙をサポートする禁煙外来もありますので、是非ご相談ください。推奨される禁煙期間は術前4週間ですが、もし4週間は無理だったとしても、できるかぎり禁煙するよう努めてください(4週間は目安の期間であり、病状により短縮もあり得ます)。なお、病院内は全てのエリアが例外なく禁煙です。入院中の喫煙は許可されておりません。また術前に禁煙できていない場合、安全上の理由により手術・麻酔を受けられないことがありますのでご注意ください。
喫煙の麻酔・手術に関連する以下のような影響が明らかになっています。(参考;周術期禁煙プラクティカルガイド 日本麻酔科学会2021年発行)
- 喫煙と受動喫煙は血液の酸素含有量を低下させる,麻酔薬の代謝経路に影響を与えるといった不利益がある。
- 喫煙は,多くの手術で創感染,感染症,肺合併症,脳神経合併症,骨癒合障害など周術期合併症の危険因子である。
- 喫煙は,長期予後の観点でも,人工関節の再置換率増加,冠動脈バイパス術後グラフト開存性低下や死亡率増加などの悪影響を及ぼす。
- 受動喫煙は,能動喫煙と同様に周術期のリスクとなる。
- 喫煙者は非喫煙者と比べて術後急性痛が強い。
- 喫煙は術後痛の慢性化リスク因子である。
- 加熱式タバコの使用者も保険診療による禁煙治療の対象である。
C.手術室入室
患者様の状態により、ベッドまたは車椅子、歩行で入室していただきます。手術室では、医師、看護師ともに清潔さを保つために帽子とマスクをしています。
手術室入室後、患者様を確認するため、ネームバンドとお名前を確認させていただきます。 続いて手術台の上に寝ていただき、各種モニターを装着します。
基本的には、指に酸素飽和度を測る装置(パルスオキシメーター)をつけ、胸に心電図のシールを貼り、上腕には血圧計を装着します。
その他、状況により必要なモニターが適宜追加されます。また点滴をするため、細い留置カテーテルを前腕や手背等の静脈血管に挿入します。穿刺時に近くの神経を傷つけたり、 内出血ができることがまれにありますが、しばらくすると消失することがほとんどです。全ての準備が整った時点で、再度患者様の氏名、手術部位等の確認を行い、麻酔の導入を開始します。
4.全身麻酔について
全身麻酔は、通常、点滴から麻酔薬を投与することにより入眠し、意識がなくなります。 その後、麻酔薬の影響により呼吸が弱くなるため、最初はマスクを通して口から酸素をおくりこみますが、 確実に安定して呼吸を補助するために、口から喉の奥の声帯を通して気管の中にチューブを入れて酸素をおくり、人工呼吸をおこないます。 場合によっては、口に入れるタイプのマスク(ラリンジアルマスク)を、気管内チューブの代わりにすることもあります。 一般的に手術の麻酔には、鎮静(意識をとる)、鎮痛(痛みをとる)、筋弛緩(筋肉をゆるめる)という3要素が必要で、麻酔科医はこれらの3要素を、麻酔薬やその他の麻酔法(硬膜外麻酔などの局所麻酔法)を組み合わせることにより達成しています(バランス麻酔)。 手術中は意識がなく、痛みを感じることはありません。 手術終了とともに麻酔薬の投与を止めると、麻酔から覚めてきます。 麻酔から覚める時間は個人差が大きいですが、麻酔薬(鎮静薬)の投与を止めてから、概ね2分~20分程度です。名前の呼びかけに対して目を開けたり、指示により手を握ったり離したりできるようになってから気管チューブを抜きますので、 麻酔科医の呼びかけに従ってください。 麻酔中は常に麻酔科医が麻酔を調節していますので、手術の途中で目が覚めるということはありません。 また、手術前の患者さんの状態が悪い場合には、意識の回復が遅くなることがありますが、 通常、麻酔のせいで目が覚めないと言うことはありません。 大侵襲・長時間手術等の場合には、手術部位や全身を休ませ、ゆっくり麻酔を覚ますこともあります。 その場合には、術後も鎮静薬、鎮痛薬などを投与し続け、集中治療室(ICU)等に帰室し人工呼吸も続行します。
5.局所麻酔(脊髄くも膜下麻酔または硬膜外麻酔)について
背中から注射をするために横を向いていただきます。できる限りでいいですが、膝を抱えて顎をひいて丸くなってください(看護師が補助します)。麻酔科医が背中側で穿刺する場所を決め、背中の消毒をします。硬膜外麻酔の場合は、さらに清潔なカバーをかけます。まず細い針で痛み止めの注射をしてから、本穿刺をおこないますのでご安心下さい。穿刺中は体が動くと危険ですから、何か不具合があってもできるだけ動かずに声に出して教えてください。
脊髄くも膜下麻酔の場合は穿刺針から直接麻酔薬を注入します。注入が終わるとすぐに麻酔の効果が現れ、下半身がしびれて動かなくなってきます。そこで体のどこまで麻酔が効いているか、麻酔科医が調べます。
硬膜外麻酔では通常細い管(カテーテル)を、穿刺針を通して挿入・留置し、試しの麻酔薬を少量投与し異常が出ないか確認します。硬膜外麻酔の効果は通常約15分以上経ってから顕在化します。
全身麻酔と脊髄くも膜下麻酔または硬膜外麻酔を併用する場合には、神経損傷等の合併症を察知しやすいよう、先に脊髄くも膜下麻酔または硬膜外麻酔を施行してから全身麻酔を導入していきます。一方、脊髄くも膜下麻酔または硬膜外麻酔のみで手術を行う場合には、麻酔が十分効いていると判断できたら手術を始めます。この場合痛みは感じませんが、触った感じやひっぱる感じなどは残ります。 脊髄くも膜下麻酔または硬膜外麻酔で手術を始めても、手術を続行するために、必要に応じて全身麻酔を追加することがあります。 そのような場合、可能な限り状況を説明した上でおこないます。
脊髄くも膜下麻酔は、状況にもよりますが麻酔薬注入から数時間程度効果が持続します。そのため短い手術であれば術後鎮痛にも寄与します。しかし起き上がると頭痛が生じることがありますので、指示があるまではベッド上で横になっていていただく必要があります。
硬膜外麻酔の場合は、通常術後に麻酔薬の持続投与を行います。留置したカテーテルに、持続注入装置を取り付けます。この装置にはPCA(Patient Controlled Analgesia:自己調節鎮痛法)が付属しており、主治医監督のもと患者様がご自身で麻酔薬の量を調節していただくことが可能です(状況により適応外の場合もあります)。
6.局所麻酔(神経ブロック)について
手術する部位を支配する神経近くに、針を刺して局所麻酔薬を投与することにより、手術により生じる痛みを軽減させます。近年、超音波装置(エコー)の進歩により、超音波ガイド下に神経ブロックを行うことが可能になり、以前より格段に安全かつ確実な効果を期待できるようになりました。当科でも積極的に超音波ガイド下の神経ブロックを導入し、手術麻酔、ペインクリニック等で活用しています。
神経ブロック単独の麻酔でも手術することはありますが、多くの場合神経ブロックは全身麻酔と併用します。神経ブロックの施行は、全身麻酔導入前に浅く鎮静・鎮痛して行うものと、全身麻酔で完全に眠っている間に行うものがあります。太い神経の周囲に麻酔薬を注入、もしくはカテーテルを留置する場合は、全身麻酔導入前に行います。神経損傷等の合併症を発見しやすいためです。一方、比較的細い神経の走行している筋膜面等に麻酔薬を注入するような場合は、直接的な神経損傷等のリスクが低いため、全身麻酔中に行っています。
7.合併症
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A-1.全身麻酔による合併症について
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◆5%程度に見られる合併症:
嘔気・嘔吐、咽頭痛、声かすれ、眠気 -
◆時に見られる合併症:
歯牙損傷、口唇・口腔内・気道粘膜損傷、喉頭痙攣、気管支喘息、気道確保困難、アレルギー反応、血圧上昇・低下、低体温、ふるえ、体位による障害(疼痛、皮膚、神経)、覚醒遅延 -
◆稀に見られる合併症:
誤嚥、肺炎、低酸素症、声帯麻痺、術中覚醒、心筋梗塞、不整脈、心不全、アナフィラキシー、肺塞栓、脳出血、脳梗塞、脳神経障害、悪性高熱症、肝機能障害、腎機能障害 -
A-2.全身麻酔時の気管内挿管について
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全身麻酔で意識がなくなった後、人工呼吸するために気管チューブを口から入れる必要があります。その際、喉頭鏡(ハンドルにブレードのついた道具)を口腔内に挿入し、舌根部を持ち上げる必要があります。この時喉頭鏡のブレードが歯に接触することがあり、歯が折れたり、抜けたり、ぐらつくようになることがあります(歯牙損傷)。差し歯やぐらついている場合には、特にその危険性があります。その場合は、麻酔科医に必ず伝えるようにして下さい。できるだけ注意しておこないますが、損傷が避けられないこともあります。損傷した歯の治療に関しては、自己負担となりますので御了承下さい。
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気管内挿管が原因で、咽頭痛、声かすれも生じることがあります。通常は2~3日で自然に軽快していきますが、中には長びく方もおられます。もっとも重症な場合、稀ですが声帯麻痺を生じることがあります。
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B.局所麻酔による合併症について
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◆5%程度に見られる合併症:
血圧低下、徐脈、背部痛、一過性神経障害 -
◆時に見られる合併症:
嘔気嘔吐、排尿困難、硬膜・くも膜穿刺、血管穿刺(血管内カテーテル迷入を含む)、かゆみ、頭痛、アレルギー反応、体位による障害(疼痛、皮膚、神経)、麻酔効果不十分、局所麻酔薬中毒 -
◆稀に見られる合併症:
硬膜外血腫、硬膜外膿瘍、神経損傷、感染、馬尾症候群、カテーテルトラブル、脳出血、脳梗塞、脳神経障害、心筋梗塞、不整脈、心不全、心停止、痙攣、気胸、アナフィラキシー、肺塞栓 -
◆(補足)
局所麻酔(脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔・神経ブロック・(狭義の)局所麻酔)の施行後、麻酔の効果が消失した後に、手・足のしびれ感や違和感などの神経症状が出ることがあります。 これは、局所麻酔薬を入れるために、神経近くに穿刺針をすすめた際、穿刺針や血腫(出血してできた血液の塊)などにより神経損傷をおこしたことが原因の可能性があります。こうした合併症を起こさぬよう最善の努力はしておりますが、完全になくすことはできません。頻度は少ないながら、合併症のリスクがあるということは、あらかじめご了解下さい。血腫を予防するため、原則として血液凝固の検査を術前に行っており、基準をクリアした患者様だけに局所麻酔を施行しております。-
硬膜外麻酔では、局所麻酔薬を持続的に使用するために、細く軟らかいカテーテルを数mm程度の狭い硬膜外腔に入れます。カテーテル挿入時や抜去時に、非常に細いカテーテルであるために、稀に断裂することがあります。
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脊髄くも膜下麻酔後に頭痛が生じることがあります。起き上がると悪化するので、頭痛が治るまでは原則としてベッド上で横になっていただきます。硬膜外麻酔では通常頭痛はありませんが、硬膜・くも膜穿刺となった場合には同様の頭痛が生じる可能性があります。多くは一週間程度で改善しますが、症状が治まらない場合、「自己血パッチ法」という治療を行うことがあります。
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局所麻酔薬の投与には、最大の注意をはらっていますが、稀に血管内に入ってしまうことがあります。そのような場合、局所麻酔薬中毒の症状がでる可能性があります。 その場合にも、常に最善の処置が取れるようにしております。
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C.各患者様の合併症等について
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患者様は、手術をうける病気以外にいろいろな病気を持っておられるかもしれません。そのいくつかは、周術期に悪化する可能性があり、麻酔中に特別な管理を必要とする場合もあります。 麻酔科医もしくは主治医が手術前に伺った際には、お話しください。また、普段飲まれているお薬が、麻酔方法や投与量を決める上で重要になることがありますので、必ず麻酔科医や主治医に伝えるようにしてください。
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問題となる主な病気 現在治っていても教えて下さい。また麻酔・手術歴も教えて下さい。 - アレルギー疾患(薬剤・食物アレルギー、アトピー、皮膚の過敏、鼻炎、ひどいアレルギー反応の既往など)
- 呼吸器疾患(かぜ気味、ぜんそく、肺気腫、気胸、肺炎、結核、腫瘍、喫煙歴、手術歴など)
- 循環器疾患(高血圧、狭心症、心筋梗塞、心不全、心筋症、心内膜炎、不整脈、ペースメーカー、弁膜症、動脈瘤、動脈硬化、静脈瘤、血栓症、腫瘍、カテーテル・手術歴、先天性心疾患など)
- 内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能亢進症・低下症、腫瘍、手術歴など)
- 消化器疾患(潰瘍、腫瘍、虫垂炎、イレウス、手術歴など)
- 肝胆膵臓病(肝硬変、肝炎、胆石、胆嚢炎、膵炎、腫瘍、手術歴など)
- 泌尿器疾患(腎不全、水腎症、ネフローゼ、結石、透析、腫瘍、前立腺疾患、手術歴など)
- 脳神経・脳血管疾患(脳梗塞、動脈瘤、脳出血、脳卒中、血管腫、腫瘍、四肢の麻痺、手術歴など)
- 神経・精神疾患(うつ病、パニック障害、統合失調症、拒食症、認知症など)
- 脊椎疾患(頸椎症、脊椎ヘルニア、脊柱管狭窄症、腫瘍、手術歴、関節疾患(可動域制限)など)
- 自己免疫疾患(リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(SLE)など)
- 血液疾患(血友病、血小板減少症、白血病、貧血など)
- 眼疾患(緑内障など)
- 口腔外科疾患(顎関節症、う歯、義歯、腫瘍、手術歴など)
- 肥満、麻酔のトラブル、悪性高熱症(家族も含む)
- 悪性症候群など
常用薬 入院前から中止しなくてはならない薬もありますので、早い段階で主治医か麻酔科医に質問して下さい。 - [ 常用薬の一例 ]:
降圧薬(血圧の薬)
糖尿病薬(内服薬、インスリン注射)
抗凝固薬(血液をさらさらにする等と言われます)
利尿薬
心臓の薬(貼り薬、舌下錠も含む)
抗不整脈薬
ぜんそく薬・肺気腫の薬(吸入薬も含む)
肝臓の薬
貧血の薬
各種漢方薬
貼り薬
点眼薬
点鼻薬
鎮痛薬
眠剤
抗不安薬
抗精神病薬など
義歯、指輪等 着脱可能な義歯、指輪等については、手術室入室前に原則として外していただくことになっています。
主治医・麻酔科医や担当看護師の指示に従ってください。予防接種 予防接種後一定期間、麻酔を受けられなくなります。
あらかじめ主治医・麻酔科医等にご相談下さい。喫煙 喫煙は周術期の呼吸機能に、重大な悪影響を及ぼします。早期から禁煙してください。
病院敷地内は完全禁煙です。他の方の迷惑にもなりますので、必ず守るようお願いします。
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D.静脈血栓塞栓症について
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肺塞栓症の原因となる静脈血栓症予防のため、当院では手術中に弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法(フットポンプ)を可能な限り使用しています。 このフットポンプが原因で、下腿の圧迫による総腓骨神経麻痺や区画症候群を生じ、術後に足の麻痺が残ることが稀にあります。静脈血栓症リスクの高い方はあらかじめ超音波等で、下肢静脈血栓等がないかを検査し、すでに血栓等があれば、処置してから手術に臨みます。
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F.小児の麻酔に関して
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お子様は手術前に点滴しにくい場合が多く、全身麻酔の方法は、大人と違って麻酔ガスを吸って入眠していただきます。 この際、特に嘔吐しやすく、誤嚥性肺炎を引きおこす危険がありますので、食事制限は正確に守っていただくようお願いします。
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また、お子様は大人に比べて、風邪が重篤な合併症を引きおこす場合がありますので、症状があれば必ず事前に申告するようにして下さい。麻酔可能かどうかを慎重に検討した上で、手術当日に中止となることもありますので御了承ください。
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症状の消失後も気道過敏性の亢進が継続しますので、上気道炎(かぜなど。RSウィルスによるものを除く)で回復後4週間、下気道炎(気管支炎、肺炎など、RSウィルスによるもの)で回復後6週間空けることにしています。患者サポートセンターから、事前確認の連絡をさせていただきますので、宜しくお願いいたします。
親御さんに、同伴入室をお願いすることもあります。その場合は、お子様が眠るまでそばに付き添っていただきます。
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G.中心静脈カテーテルの挿入について
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侵襲の大きな手術(心臓・大動脈手術、肝臓、食道など)、長時間手術、術後長期経口摂取できない場合などでは、末梢静脈路(通常の点滴)では投与困難な薬剤を投与するため、体の深部にある太い静脈(中心静脈)にカテーテルを挿入します。挿入する部位は、頚部の内頚及び外頚静脈、鎖骨下静脈、肘静脈、大腿静脈があります。
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合併症は、挿入部位により異なりますが、肺の穿刺による気胸(場合により、胸腔内にチューブを挿入しなければならないことがあります)、動脈穿刺による血腫形成、反回神経麻痺、カテーテルの感染・断裂などがあります。当科では、カテーテルを挿入する術者は清潔なガウンを着、清潔な手袋を付けて、清潔操作で中心静脈カテーテルを挿入しています。また原則として、超音波画像(エコー)をガイドにし、血管等を目視しつつ挿入して、合併症のリスクを低減させています。
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*麻酔科医もしくは主治医が、あらかじめ説明し同意を取ってから中心静脈へのカテーテル挿入を行いますが、緊急的に入れる必要が生じた場合には、後からの説明となる場合もありますので、ご了承下さい。
Q & A
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1.麻酔はすべての人に効くのでしょうか?手術中に目が覚めませんか?
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全身麻酔はすべての人に効きます。目が覚めることはありません。 局所麻酔(脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔・神経ブロック)は効きが悪い場合がありますが、 その場合は更に麻酔を追加するか、もしくは全身麻酔を併用します。 局所麻酔の場合でも、眠くなる薬を使用することにより、手術している音などが、気にならなくすることができます。
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2.酒飲みは麻酔が効きにくいのでしょうか?
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普段多量のお酒を飲まれる方は、肝臓での薬の分解が速い可能性はありますが、麻酔は効きますのでご安心下さい。大酒家で、肝臓の機能が低下している場合は、むしろ麻酔薬の代謝速度が遅くなります。
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3.全身麻酔をすると物忘れが激しくなりませんか?
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若年者ではまずありません。高齢者の場合、手術のストレス、環境の変化や薬剤の影響で、手術後不穏状態となることがあります。通常は一時的ですが、高齢者や、脳動脈硬化のひどい人では、手術前の状態より物忘れ、認知症が稀に進行する場合があります。 可能な限り早期離床をはかることが大切です。
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4.麻酔はどのくらいで覚めるのでしょうか?
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全身麻酔は手術時間に合わせて麻酔薬を調節しますので、通常は手術終了後まもなく麻酔から目が覚めます。個人差が大きく、概ね2分~20分くらいで覚醒することが多いです。全身状態の悪い場合、肝臓や腎臓の機能がかなり低下している場合、脳血管に問題のある場合は、麻酔の覚めに時間がかかることもあります。
脊髄くも膜下麻酔は、およそ2-3時間麻酔効果が持続し、その後しだいに麻酔領域が小さくなっていきます。 硬膜外麻酔の場合は、術後は通常麻酔薬を持続注入していますので、麻酔領域に感覚の鈍い感じがしたり、四肢に力が入りにくいことがあります。持続注入を止めれば、2~3時間以内に麻酔効果は切れます。 神経ブロックは状況によりますが、概ね3時間~10時間くらい効果が持続します。持続注入している場合は、注入を止めるまで効果が持続します。
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5.全身麻酔から手術中に覚めてしまわないか?
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全身麻酔では、短時間作用性の麻酔薬を、持続的に投与し続けることによって麻酔を維持しています。したがって麻酔薬を切らない限り、通常は途中で目が覚めてしまうことはありません。ただ、全身の状態が極めて悪い場合などは、麻酔薬を十分投与できないことがあり、そのような状況下で術中覚醒をすることは稀にあります。
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6.注射(点滴)が怖い
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小さな子供などは注射を嫌がるので、ガスの麻酔薬を吸入して麻酔を導入し、入眠後に点滴をします。大きな子供や大人でも可能ですが、リスクの高い方(高度合併症、高齢者、全身の状態が悪い方、高度肥満、胃内容膨満など)は、麻酔導入時に投薬ルートがないのは危険ですので、先に点滴を取るようにしています。
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