消化器外科
どんな病気を扱っているの?(胃、十二指腸)
はじめに 胃癌とは、当院の胃切除実施状況
胃癌は日本、中国、韓国をはじめとする東アジアに多い病気です。日本において、癌種別の死亡率の中で、胃癌の死亡率は第3位です(2020年)。5年生存率と言われる治癒率は約60%程度ですが、早期に見つかれば90%以上の治癒が見込めます。特に日本では、健康診断を積極的に行っています。皆さんも、職場で胃癌検診を受けられたことがあると思います。実は日本でしか行っていない検診です。症状もなく検診で見つかれば早期に発見できる可能性が高くなります。
胃癌の初期段階では、自覚症状があまりないため早期発見のためには検診を積極的に利用する必要があります。胃癌のリスクは40代から増加し始め、50代60代70代と年齢を重ねるにしたがい増加します。当院でも胃がん検診を受け付けていますので積極的に検診を受け、胃がんと診断された場合は専門医に相談して下さい。
当院では低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット支援手術)に力を入れており、2023年の腹腔鏡手術割合は90%でした。また、可能な限り胃全摘を避け、胃を残す手術を行えるよう日々診療にあたっています。
胃癌の診断・治療
胃癌の治療は日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」に基づいて、内視鏡やCTなどの画像検査から正確な進行度の診断を行い、それぞれの進行度に応じた治療を行います。
<胃癌ガイドラインに基いた胃癌治療のアルゴリズム>(胃癌治療ガイドライン第6版)
M1:遠隔転移を伴うがん T1:粘膜下層までの早期がん T4b:多臓器に浸潤するがん
N(+):リンパ節転移を伴うがん
胃癌治療
胃癌治療の主なものは ①手術治療 ②薬による治療 があります。
それぞれの進行度に応じて最適と思われる治療を患者様と相談し、治療していきます。近年では、①手術治療と②薬による治療 を組み合わせて行う方法が多くなされています。
①手術治療
従来からされている開腹手術と低侵襲(腹腔鏡・ロボット)手術があります。それぞれの治療の特徴があるため、進行度や治療方針によって選択します。当院では大部分の患者様に対して、低侵襲手術(腹腔鏡やロボット支援手術)を積極的に行っています。
幽門側胃切除術、胃部分切除術にとどまらず、胃全摘術、噴門側胃切除術においても低侵襲手術を導入しています。低侵襲手術は開腹手術と比較して傷が小さいため、整容性に優れるとともに術後の痛みが少なく、手術からの回復も早いと言われており、早期がんだけでなく、進行胃癌に対しても広く行っています。
また可能な限り胃全摘を避け、胃を温存する手術を目標として診療にあたっています。
また、高度進行胃がんに対しては、術前に抗がん剤治療を行った後に手術を行い、治癒成績を向上する取り組みをしています。
胃癌に対する腹腔鏡手術は2002年から,ロボット支援下胃切除は2018年から保険給付の対象となっています。しかし、技術的難易度も高く施設ごとの適応は違います。当院では、内視鏡外科学会にて認定された技術認定医(胃癌)によって、積極的に取り組んでいます。
<低侵襲手術(ロボット支援手術/腹腔鏡下手術)>
手術方法は、お腹の中(腹腔といいます)に二酸化炭素を注入し空間を保ち、トロッカーと呼ばれる径5-12㎜程度の筒状の器具を、5本程度腹腔に挿入し、そこから小さなカメラと細いマジックハンドのような鉗子と呼ばれる器具を入れて手術を行います。切離する道具としては電気メスや、超音波メスなどを使用します。また自動ホッチキスのような縫合する器械も用います。
低侵襲手術の利点は、傷が小さいため痛みが少なく、術後の回復が早い点です。また整容性にも優れており、術後の心理的な面でも利点があります。また近年の技術的進歩もあり、小さなカメラを通して、非常にきれいなハイビジョン画像を得られます。従来の手術では見えなかったような、血管が確認でき、細かい神経を温存することもできるようになり、より安全で精細な手術が出来ます。そのため、一般的に開腹手術と比べて出血量も少なくなります。
2024年1月より手術支援ロボット「da Vinci -ダヴィンチ-」を胃がん手術にも導入しています。
<機能温存手術>
胃癌の手術後には、胃が小さくなることで食事量が減ったり、食事の消化吸収能力が低下することで、体重が10~20%程度減少することが知られています。特に胃全摘の術後では体重減少は顕著で、術後の生活の質に大きく影響することが報告されています。当科では、可能な限り胃を残すことを目標として診療にあたっており、通常胃全摘が必要と判断されるような症例でも、根治性を損なうことなく、胃亜全摘術や噴門側胃切除術の術式で胃を温存することを心掛けています。
②薬による治療(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)
化学療法、抗がん剤治療ともいわれ、近年新しい薬のエビデンスが出てきています。分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害薬など新しい機序の薬も保険適応となりました。「胃癌治療ガイドライン」による、最新の治療を提供させていただきます。また、近年は手術成績を向上させるために、手術と薬による治療を組み合わせる方法も行っています。
胃癌治療ガイドライン第6版 引用 改変
胃粘膜下腫瘍 -GISTなど
胃粘膜下腫瘍に対しては、機能温存手術である、胃部分切除術を行っています。極力胃の切除範囲を小さくして機能を温存しています。腹腔鏡下で手術を行うことにより、胃の切除範囲のみならず、体の創に関しても極力小さくしています。
また腹腔鏡のみでは困難な症例に関しては、消化器内科医による内視鏡と共同して行う、腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を取り入れています。
食道癌治療
食道がんとは
食道がんは、食道の内側にある粘膜の上皮から発生します。 食道がんの罹患率は60~70歳台に好発し、女性よりも男性で約5倍多くなっています。
食道がん発生の危険因子としては、日本人に多い扁平上皮がんでは喫煙と飲酒が相乗的に作用してリスクが高くなることが知られています。欧米に多い腺がんでは、肥満や逆流性食道炎でリスクが高くなるとされています。日本でも生活習慣などの欧米化により、今後は腺がんの増加が予想されます。
食道がんの初期に見られる症状としては、食べ物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛む、熱いものを飲み込んだときにしみるといった症状が挙げられます。しかし、初期には目立った症状がないことも多く、検診や人間ドックのときに発見されることが20%近くあります。がんが進行するにつれて、食道で食べ物がつかえる、体重が減少する、胸や背中が痛む、むせるような咳や血痰がでる、声がかすれるなどの自覚症状が現れてきます。
診断と治療
食道がんの診断には、食道造影検査(バリウム)、上部消化管内視鏡検査、CT検査、PET-CT検査などの検査を行います。食道がんの進行度(ステージ)を決定して、進行度に基づいた治療方法を決定します。
食道がんの病期とガイドラインで推奨される治療法の関係を図に示します。
食道がんの治療は、内視鏡治療、手術治療、放射線治療、化学療法の4つがあり、患者さんの希望や年齢、合併症、病気の特性などを考慮しながら、治療法を決定します。
外科治療(手術)
食道癌におけるリンパ節転移は胸腔内のみならず、頚部から腹部の比較的広い範囲にわたって認められるのが特徴です。従って、頚部から腹部に至る比較的広範なリンパ節の除去を行う必要があります。
①従来法では、手術創が胸部と腹部に大きく切開するため、術後の疼痛などの負担が大きく、当院では、主に②胸腔鏡下手術を行っています。従来法に比べて、創部が小さく、痛みや肺への負担が少なく、術後の回復も早くなります。
- ①従来法
手術は以下のように行います。右第4肋間より胸腔内に入り、腫瘍のある胸部食道とその周囲のリンパ節を一塊にして切除します。つぎに胸骨下縁から臍に至る腹部の正中で切開し、胃の小弯側とその周囲のリンパ節を切除します。また頸部にも横切開をおき、転移を起こしうる可能性のあるリンパ節を除去します。再建法は、胃を細長く形成して食道の代わりとし、(胸腔内、胸骨後経路、皮下経路)を通して頚部の所で残っている食道と吻合します。何らかの理由で胃を持ち上げて再建することができない時には大腸や小腸を頚部まで持ち上げます。
- ②胸腔鏡下手術 (鏡視下手術)
胸腔鏡下手術はまず、右胸部に直径1cmの穴を開けてテレビカメラを挿入し、胸のなか(胸腔内)をモニターに映します。このモニター画面を見ながら、さらに直径1cm程度の穴を数か所(3~6か所)あけ、その穴から手術器具を挿入して、従来法と同じことを行います。腹腔鏡下手術はお腹に6cmの小切開を加え、ここに術者の左手だけをお腹のなか(腹腔内)に挿入し、モニターをみながら手術を行います。この手術は術後痛みが少なく、回復も早くなります。しかし、肺の癒着が存在する場合や、腫瘍が大きくて切除が困難な場合、出血した場合は、従来の開胸手術や開腹手術に変更する場合もあります。手術は安全、確実に行うことが重要だからです。
化学療法
遠隔転移を伴う進行食道がんや術後の再発がんに対しては主に化学療法がおこなわれています。食道癌においても、近年新しい薬のエビデンスが出てきています。免疫チェックポイント阻害薬も保険適応となりました。また、食道がんでは、がんや全身の状態により、薬を単独または複数組み合わせて用います。放射線や手術と組み合わせる場合には、状況に合わせて同時に行ったり、順番に行ったりします。「食道癌治療ガイドライン」による最新の治療を患者さんの状態に合わせて提供させていただきます。
放射線療法
食道癌に対する放射線治療には、がんを治す根治的放射線治療と、がんによる症状を緩和する姑息的放射線治療があります。放射線治療は局所に限局した治療であり、広範なリンパ節領域すべてに照射が可能なわけでもありません。化学療法と放射線療法を組み合わせ腫瘍の完全消失を期待します。
治療は放射線照射を週5日(平日)、5週または6週間連続して行います。
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