乳腺内分泌外科
基本情報
- 外来診察予定表は「Bブロック(外科)」ページをご覧ください。
診療内容と特色
当院は日本乳癌学会の認定施設であり、乳腺内分泌外科では主に乳癌の診断、治療を行っております。診断に関しては、診察日当日にマンモグラフィ、超音波検査などを施行し、針生検などを含めた迅速な診断を心がけています。治療に関しては、手術に加えて薬物療法、放射線療法など科学的根拠に基づき、かつ患者様一人一人ににあった治療(個別化治療)を行っていきます。また、最先端の治療を提供できるように治験や臨床試験にも積極的に参加しております。乳腺外科医が病理診断に、放射線治療医、形成外科医、認定看護師と連携しながら、質の高い、かつ患者様に寄り添った医療を提供していきたいと考えております。
乳癌の治療について
はじめに
乳癌が女性が罹患する癌の第1位であり、9人に1人がなると言われています。好発年齢は40歳代からですが、20歳代や30歳代の若年者においても増加傾向があり、高齢の方でも罹患します。定期的な検診を受診し、早期発見ができれば十分根治が可能です。
根治を目指すためには手術療法、薬物療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療を行っていきますが、乳癌の進行度によって治療の流れが変わってきます。
(乳癌診療ガイドライン2022年版より) |
(乳癌診療ガイドライン2022年版より) |
(乳癌診療ガイドライン2022年版より) |
手術療法
乳癌の手術は大きく分けて乳房切除術(乳房全摘術)と乳房部分切除術(乳房温存術)とがあります。従来の乳房切除術は乳輪乳頭も含めて乳房をすべて切除しますが、腫瘍の状態によっては乳輪乳頭を温存する方法もあります。また、形成外科医と連携しながら、乳房再建術にも積極的に取り組んでいます。乳房部分切除術は腫瘍を一定のマージンをつけて切除する方法です。切除した場所には残っている乳腺組織や脂肪組織を充填することによって整容性(美容性)保つように致します。また腫瘍の大きさや場所によって、乳房の著しい変形を来す場合は形成外科医と協力しながら背中やお腹の筋肉を充填する方法もあります。
乳癌の場合は腋窩(脇の下)のリンパ節に転移することが多く、乳房の手術と同時にそれらのリンパ節も切除します。しかし、従来通りに腋窩リンパ節郭清(脇の下にあるリンパ節を周囲の脂肪組織も含めてすべて切除すること)を行いますと、術後に腕のむくみなどを来しやすくなります。それらを防ぐために、センチネルリンパ節生検の結果によって腋窩リンパ節郭清の省略を行っております。センチネルリンパ節とは乳癌から流れてきたがん細胞が最初にたどり着くリンパ節です。もしそのリンパ節に転移がなければ残りの腋窩リンパ節には転移がないはずなので、腋窩リンパ節郭清を省略することが可能になります。そのためには正確なセンチネルリンパ節の診断が重要になりますが、当院ではOSNA法を用いてより正確な診断を心がけております。また、たとえセンチネルリンパ節に転移が認められてもある条件を満たせば腋窩リンパ節郭清を省略する場合もあります。
(OSNA法で使用される遺伝子増幅検出装置) |
薬物療法
乳癌は発見された時点ですでに癌細胞が全身に散ってしまっていると考えられています(非浸潤癌を除く)。それらの癌細胞も手術と同時にたたいておかないと数年後に転移再発してきます。それらの癌細胞を除去する治療法として薬物療法が行われます。乳癌の周術期に使用される薬物は主に化学療法(いわゆる脱毛など来す抗癌剤治療)、分子標的療法、ホルモン療法になりますが、乳癌の悪性度や進行度、ホルモン受容体やHER2受容体の発現度、患者様の年齢や全身状態、ライフスタイルに合わせて選択していきます。基本的にはホルモン受容体陽性の患者様にはホルモン療法を、ホルモン受容体陰性の患者様には化学療法が中心になりますが、ホルモン受容体陽性でも乳癌の悪性度や進行度によっては化学療法を追加する場合があります。化学療法を追加する判断材料として、癌の再発に関わる複数の遺伝子発現量を測定する多遺伝子アッセイ検査の一つであるオンコタイプDX(オンコタイプDXについて参照)を使用しています。HER2受容体陽性の患者様には化学療法と分子標的薬(トラスツズマブやペルツズマブなど)を併用した治療を行います。また、ホルモン受容体陽性で悪性度の高い進行乳癌の患者様にはアベマシクリブ、BRCA遺伝子変異(BRCA遺伝子検査について参照)のある患者様にはオラパリブと言った分子標的薬を、ホルモン受容体陰性かつHER2受容体陰性の一部の患者様には免疫チェックポイント阻害剤をさらに追加することによって再発率を下げるという臨床試験の結果が報告されており、当院においても積極的に使用しております。
放射線療法
乳房部分切除した場合、残っている乳房に局所再発予防で放射線療法を行います。また、センチネルリンパ節に転移が見られても腋窩郭清を省略した場合、腋窩(脇の下)にも追加で放射線療法を行います。乳房切除術を施行した場合は原則的に放射線療法を省略することができますが、腫瘍径が大きい場合や、腋窩リンパ節などに転移が多く見られた場合は胸壁や鎖骨上にあるリンパ節などに放射線療法を行います。
治療は週5日(平日)、5〜6週間連続して行われます。
オンコタイプDXについて
乳癌の治療において手術療法以外に重要なものとして抗がん剤治療があります。抗がん剤治療は乳癌術後の再発を減らすために行いますが、吐き気や脱毛など、お体に負担のかかる副作用を伴う治療になります。そこで欧米を中心に海外では、再発する可能性が高いかどうかを調べるために、癌の再発に関わる複数の遺伝子発現量を測定する多重遺伝子検査が広く使用されています。日本でも多遺伝子検査の一つであるオンコタイプDXが保険収載され、2023年9月より使用可能となりました。これにより「再発の低リスク群」と判定されれば、比較的安全に抗がん剤治療を回避することができ、「再発の高リスク群」と診断された患者さんだけに抗がん剤治療を行うことで癌オーダーメイド治療につながります。
BRCA遺伝子検査について
2020年度診療報酬改定において、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)が疑われる乳癌・卵巣癌患者に対して血液を検体とした生殖細胞系列のBRCA遺伝子検査が、適格基準を満たす場合に保険適応となりました。当院でも2020年5月よりBRCA遺伝子検査を行っております。
また、癌を未発症の方やHBOC患者様の血縁者の方に対しては遺伝子カウンセリングを受けていただいた後にBRCA遺伝子検査を行うことができます。こちらは自費診療になります。
リスク低減乳房切除術やリスク低減卵巣卵管切除術は当院では行っておりませんが、施行されている施設に紹介させていただきます。
BRCA遺伝子検査について詳しく聞きたい方や、検査をご希望の方がおられましたら、お問い合わせ下さい。
入院期間の目安
乳腺外科での術式別の入院期間の目安
術式 |
入院期間(目安) |
---|---|
乳房部分切除+センチネルリンパ節生検 |
4日〜5日 |
乳房部分切除+腋窩リンパ節郭清 |
10日〜2週間 |
上記に同時乳房再建を伴うもの |
2週間 |
乳腺外来について
乳腺の精密検査・診断を行います。乳がんの早期発見・診断を目的として乳腺専門外来を設けています。
乳がん検診や人間ドックなどで、要精検、要経過観察と診断された方や気になる症状のある方は、お気軽にお問い合わせください。
詳しくは「乳腺外来(外科)について」ページをご覧ください。
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